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シゴトバCAMPUS VOL.9

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シゴトバTALK  VOL9.

「幅的本にまつわる

      仕事の作り方」

HABA YOSHITAKA / ブックディレクター

幅 允孝

1976年 愛知県生まれ

2005年 選書集団・BACH(バッハ)設立

BACH

http://www.bach-inc.com

ー「僕は個人に向けて本を選びたい」

ー幅的お祭りを巡る旅に出て

 

天 早速ですが、今日は「幅君的な本にまつわる仕事の作り方」っていうことでお話を聞かせていただきたいなぁと思ってます。で、幅君肩書き、ブックディレクターってどんな仕事かってことから教えて欲しいと思います。簡単にいうと??

 

幅 これはちょっと自分では名乗らないんですけど。

 

天 「ブックディレクターの幅です」とは言わないってこと?

 

幅 「バッハの幅です。」という感じですかねぇ~。

 

天 バッハって幅の反対?

 

幅 うんうん、だいたいそんな感じですかね。笑

 

高尚な感じで答えざるをえない時は、ヨハン•セバスチャン•バッハとかグレン・グールドのお墓参りに行った逸話とか持ち出しますけど(笑)、簡単にいうと・・・会社の名前がバッハです。

 

天 え、じゃあブックディレクターって誰が呼んだの?

 

幅 えっと情熱大陸に呼んでいただいたときに。そう、あれは毎日放送なんですけど、制作会社20社ぐらいあってコンペティションが開かれるんですね。

 

天 へぇ!?

 

幅 だからちょっと撮られて放送されないって方も結構いらっしゃるみたいで。だから依頼が来ても気をつけなきゃいけない(笑)

 

天 ということは、「俺さぁ情熱大陸の取材がきてて・・・」って言っても

 

幅 放送されないこともあるんですよね。

 

天 じゃあそれを搔い潜って紹介されたんですね!?

 

幅 ラッキーですよね。そこで職業名が無いと放送できないのでさっとつけたら、当時そういう職業も周りにいなかったんですが、テレビの怖いところであたかもそういう職業が存在するかのようになってしまいましたね。元は本が好きで単純に本屋さんに就職しました。

 

天 そうなんだ。本が好きってどれくらい?小学6年生で一日に2、30冊読んだとか?

 

幅 そんなんではなくて・・・。ちなみにジョージさん、本は冊数で語らない方がいいいですよ!

 

天 あ、すいません・・・

 

幅 最近の「沢山読んでるやつ=偉い」みたいな考えが間違っていて一冊でも良いからその人の心に刺さっていて結力化してることのほうが僕は重要だと思うんです。

 

天 なるほど。

 

幅 強いて言うなら、時間で表した方がいいですよね。どれくらいテキストに触れているか。ともあれ、この調子で行くと永遠に終わりそうも無いので(笑)僕は本屋さんに就職したんですよ。2002年まで「青山ブックセンター」で仕事をしてました。

 

天 そういえば海外に遊学してたんだよね?

 

幅 そうですね。最初就職活動したくなくて・・・当時「モラトリアム」だとか言われて(笑)僕にとっては大事な時間だったんですけど。郵便局の夜勤のバイトすると1日1万2千円ぐらいかな、貰えまして。それで150万円ぐらいためたのかな。それでカナダのカールトンってとこに留学しました。

 

まぁそこでカリキュラムが終わって、時間とお金が余ったから、バックパックを背負って「幅的お祭りツアー」なるものに出たんですよ。

 

天 わぁ~楽しそうだね。お祭り回りなの?

 

幅 実は「祭り」と名乗ってるものを求めてというよりも、例えば僕ツールドフランスという自転車レースがすごく好きなんですけど、これは僕に取って「祭り」な訳なんですよ。「やっぱ見とくべきでしょ!」っていう感じで。「モントレのジャズフェスタ見ておかなきゃいけない!」とか。「デトロイトテクノ見に行こう!」とか。

 

天 ついていけない・・・(笑)

 

幅 全然いいです!とにかく自分の中で「コレは!!」っていうものを色々見に行く旅行にしたんですね。今更ですけど、僕にとってすごく意味のあった時間ですね。

 

なんかね、「好きなもの」って「好き」で止まっちゃうんですけど、実際に見ると案外期待外れだったり、意外に小さいとかって感じることもあるんですよね。そうすると、ただの憧れ対象だったものが、自分との距離感を実測できるようになるんです。

 

そうなってくると自分の言葉で語れるようになるんです。だからそれまで僕は本がただただ「好き」で読んでたんですけど、それに気付いてからは何となく本と自分の距離をどうとって、どうやって自分の言葉で話せるかという方向にちょっとずつ考えるようになったきっかけになりました。

 

 

ー生活のどこかの側面を1㎜でもあげるような情報として作用するもの

 

天 今バーチャルで色んなものが見えて、ネットでもなんとなく「行った」気になっちゃったりするじゃん?そういうのはどう思う?

 

幅 もう絶対ダメですね!!やっぱり僕が腰痛から離れられないように、皆さん生きてる間愚鈍な体を引きずって生きていくしかないので、やっぱり足で稼ぐ情報しか入ってこないってホントに思うし、やっぱり本とかもインターネットで見ると「読んだ気になる」のがほんとに楽なですよ。

 

なんとなく骨子がまとめられていて、レビューもあったり。読んだ気になったり、読んだフリをするのもとても楽になりましたよね。でも本当の本というのは書き手と読み手が一対一の関係になるもので、要は精神の受け渡しのような事が本を読むという事だと思うんですね。だからフワフワっとして分かった気になっていては永遠に辿り着けない何かってのはあるように思いますね。僕はそれが携帯であろうが、Eペーパーで読もうが紙で読もうが何でもいいと思います。

 

天 僕も読み返しちゃうもん。

 

幅 そうそう。ともあれ書き手と読み手が一対一になる。それでただ読んだことを目的としたり誰かに威張るとかじゃないんです。

 

たった一言であっても「何か」がその人の中に刺さって(言葉なりアイデアなりが)ちゃんとその人の日々の生活のどこかの側面を一㎜でもあげるような情報として作用するというんですかね、その方が重要だと思うんです。

 

 

ーブックディレクターとは?

 

天 そうそう、僕よく仕事で部下に「そんなに紙出さないでくださいよ」って怒られるんだけどプリントアウトしないと頭に入ってこないんですよ・・・

 

幅 人はよくそういうことを「古い古い」って言いますけど、身体感覚に働きかける何かって無くなることはないし、そこを忘れちゃうような不感症な人間にはなりたくないなっておもいますね。

 

天 あ、全然議題とかけ離れてる!?

 

幅 ヤバいヤバい!えーっと(笑)ブックディレクターは色んな場所に本を持っていく仕事で、やりたいのは日常の色んな場所で本を手に取るオポチュニティー(機会)を点在させる事。

 

「この本をこう読め」というのではなく、とにかく一ページ目をめくってもらうことに意識を向けています。

 

後はその人がどう読もうが僕は何も言えないのだけど、ページをめくってもらわないとホントはその本は始まらないんで、自発的に一ページ目を開きたくなるような環境設定をしたり、場所を作る事が仕事です。だめだね、結論からちゃんと言わないといけないな(笑)

 

 

ー幅さんの歴史

 

天 ではこれから幅君の歴史の紹介なんだけど。TSUTAYA東京六本木は何年前?

 

幅 2003年4月25日。

 

天 そこのディレクションをやったでしょ?

 

幅 そうですね。

 

天 何でいきなり超実験的なTSUTAYA一号店の担当になったかっていうと凄いんだよね。

 

幅 運が良いですよね。僕は青山ブックセンターに勤めていたんですけど、経営的にも当時大変な時で。あんま細かい話をするとそれで90分終わっちゃうんで・・・当時僕が石川次郎さんに出会いまして。

 

天 超有名なマガジンハウスのね。

 

幅 そうですね。彼はポパイやブルータスの創刊、編集長をしていた方で。
その石川さんに当時僕が食えなくて書いていた雑誌の記事を読んで、「こいつ面白いじゃん」って目を掛けていただいた経緯があります。

 

天 では早速(スライドを見ながら)ブルックリンパーラー新宿!

 

幅 ブルーノートさんがやっているレストラン兼本屋さん。ここは体を休めるという意味で、ブルックリンラガーが飲めます。

 

天 大阪にもできたんだよね。

 

幅 心斎橋のTOMORROWLANDさんの地下にできました。そこのホワイトエールが美味しいのでぜひ飲んでみてください。

 

天 これもビールを飲みながらペラペラっていう感じ?

 

幅 酔っぱらった勢いで買っていただこうという魂胆でございます。笑

 

天 次、伊勢丹ビューティーアボセカリー。ビューティーの中に本?

 

幅 そうそう、伊勢丹新宿店にあるんですけど、女性でオーガニックな化粧品にこだわる方が増えてるので、化粧品だけではなくて、美と健康にこだわる人が、オーガニックなシリアルとか酵素ジュースとかウォーターバーとか、ビオワインとか色んなものがありますね。B1にワインコーナーあるにも関わらずここには酸化防止剤を使っていないワインが置いてあるんです。

 

まぁまぁ、何を摂取するかとか、何を塗るかというのも大事なんですけど、精神的に健やかじゃないと、美とか健康とか語れんよねぇってことで、本を入れたいと。それでバイヤーさんから声を掛けていただきました。といっても半分は実用書なんですよ。

 

天 ビューティーだけの本じゃないんだ。

 

幅 僕、ここの本を選ぶにあたり、お化粧はしないんですけど、酵素ジュースは飲みましたよ。やっぱり実践しないとわからないんです。いきいき酵素くんという低回速のジューサーを買いました(笑)ぐわーって早く回しちゃうと熱が出て酵素が死んじゃうんですよ。四十何度より上がらないようにしながら。あと糖尿病対策の本もあったりとか。

 

天 (スライドを見ながら)なのにグリとグラがあるんだ!

 

幅 そうですね。半分は実用で、半分は精神的な物です。例えばココシャネルの写真集があるんですけど、彼女は写真とられるのが嫌いで、しかもずーっとタバコを吸ってるんですけど立ち姿がすっごい奇麗なんですよ。「意思を感じる女」というか。精神的に「この人の生き様格好良かったよなぁ」みたいなリスペクトできる部分を取り上げたんですよね。他にも詩集であったりとか。

 

天 それは幅君っぽいセレクトだね。

 

幅 基本的に僕が本を選ぶときに気をつけているのは、自分の好きな本を持っていってもお節介にしかならないといつも思ってます。だからインタビューをするんです。伊勢丹BAでは売り場のスタッフの皆々様にどんだけインタビューしたかってことですよ(笑)

 

天 それ可愛かっただけなんじゃないの?(笑)

 

幅 それもありますけど。(笑)

 

天 そんなインタビューするの?「どんな本が好きですか?」じゃないんでしょ。

 

幅 そうなんです。答えを聞いちゃだめなんですよ。
例えば江國香織さんが好きときいて彼女の作品が全部並んでなかったら「ダメな本棚」になっちゃうじゃないですか。そうじゃなくって、自分らの中で何冊かキーブックを持っていって、説明してそれの“感触を得る”っていうことを大切にしていますね。それをしていると自分が考えているものとの距離感が縮まってくるのが分かるので。

 

 

ー僕は個人に向けて本を選びたい

 

幅 僕はF1層と完全に合致する人がいないように、個人の為に本を選びたいんです。スムージーのことを聞いたあの人に、「この本良かったですよ!」とか。だからとにかくインタビューします。僕が最近思っているのは、どういう本を選ぶかも重要ですけど、選んだ本をどう差し出すかっていうことの方がより重要になってくるんじゃないかなと思ってます。

 

世の中ってセレクトショップのような「選ぶこと」に価値が置かれていた部分がありましたけど、1億総編集者時代と言いますか、モノを選ぶことよりも、物を選ぶという行為は常に誰もが行っている中、重要なのは選んだ物をどう配置するかまで、ちゃんと脇を閉めて考える人間じゃないと、自分の伝えたい事を伝えられないんじゃないかなぁと思います。選ぶ人はたくさんいるけど。

 

実例を挙げると、ここにビオワインのコーナーがあるんですね。そこで、ワインの作り手の本とか、一方で女性作家のお酒にまつわる本があったり、あくまで、女性とお酒がキーワードになった本がたくさんあるんです。でも昔の本屋さんにそれが並んでいるのは恐らく「食のコーナー」になるんです。「酒」って書いてあって「ワイン」っていう札があるんです。でもそれって通り過ぎちゃって気付かれないんですよね。

 

そうじゃなくって、僕らはどうするかっていうと、セグメントのコピーライトをすごく吟味するようにしていて、例えばビオワインコーナーのそれには「奇麗な酔い方」って書いてあるんです。

 

天 おー。。。

 

幅 全て綺麗な酔い方を伝えるコーナーではないんですよ。でもこの本に引っかかってもらうときに、どういう投げかけ方が必要かという点をよく考えます。つまり差し出し方を考えます。慮りとも呼べるでしょうか。でもそういう想像力がないと脇が上がってきて「ハイ!」って渡しちゃうような差し出し方になっちゃうんですよね。

 

天 思い出した、ciboneの「いにしえのダンディー」のコーナーだったわ。白洲次郎や伊丹十三があったもんね。

 

幅 本の背のタイトルよりも大く作るってことが、より手に取ってもらえる可能性が高まりますよね。つまり本のタイトルを付けるとき以上の集中力が必要になってくるです。

 

 

 

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